11月末にリードテックが「WinFast PxVC1100」を、12月初旬にトムソン・カノープスが「FIRECODER Blu」を発売し、にわかに注目度があがったマルチメディアプロセッサ「SpursEngine」。CPUに負荷をかけずに動画のトランスコードを高速にこなせる能力があり、搭載カードの初回販売時は各ショップで売り切れが続出するなど、好評を博している。
それを受けて、SpursEngineを開発した東芝がユーザーイベント「SpursEngine Start-up!」を12月6日にカフェソラーレ リナックスカフェ秋葉原店で開催。12時半スタートのイベント会場には昼前から観客が集まり、約40人の行列ができるほどの反響があった。
T-ZONE.PC DIY SHOPの店前の特設コーナーでWinFast PxVC1100をアピールしていたリードテックのスタッフは「最初から入場を規制しなければならないほど人が集まったみたいですね。私も“ちょっとぉ、入れないんだけど!”とお客さまからお叱りをいただきました」と話していた。
カフェソラーレ リナックスカフェ秋葉原店は80人程度が中に入るとすし詰め状態となるため、注目度の高いイベントは混み合うのが当たり前となっているが、入場規制が敷かれる例はめずらしい。幸運にも入場できた多くのユーザーは、一度外に出ると戻れなくなる可能性もあるため、セッションが予定されている12時半から17時半の間、ずっとその場を動かなかった。
主催の東芝スタッフも予想以上の人入りに驚いていた様子だったが、某ショップ店員氏は「動画キャプチャやエンコードなどの用途で使える注目アイテムは、コアなユーザーが関心を寄せるジャンルです。PT1の深夜販売も、たった5枚のカードに150人以上が集まりましたからね。SpursEngineのユーザーもそうしたユーザーの琴線に触れるものがあるので、今回の反響も予想の範囲内ですよ」と語っている。
先のリードテックのスタッフは、WinFast PxVC1100について「注目度の高さはイベントの客入りでも証明できていると思いますが、現状では対応ソフトが少ないのがネックになっています。SpursEngineは、エンコードや動画のアップスケーリング、そのほかのマルチメディア操作を専門で処理できる潜在能力を秘めているので、活用できる道具が充実すれば定番のPCパーツとなる可能性もあります」と語る。
今回のイベントに参加した多くのメーカーも、SpursEngineの普及のために対応ソフトの充実を意識していた様子だ。その流れで、イベントの目玉のひとつとされたのはリードテックが発表した「SpursEngineのSDKを無償公開予定」というアナウンスだ。SDKはソフトウェアを開発するために必要なツールをまとめたもので、プログラミングのスキルがあるユーザーならSDKを利用して独自ソフトウェアを作成できるようになる。
リードテックは12月中に同社のサイトからSDKを無償ダウンロードできるようにする予定で、WinFast PxVC1100だけでなく、SpursEngine搭載マシンなら利用できるものとなる。Windows Media Playerで超解像度(アップスケーリング)画像のサンプルが楽しめるプログラムを内蔵するほか、AVCHD(MPEG-4/H.264)への対応も検討中という。
その詳細については、東芝セミコンダクターが解説。SDKでは、SpursEngineのうち、アップスケーリングやハンドジェスチャー機能を除いたすべての機能が使えるようにしているという。また、4つのセルを利用するまったく新しい用途のソフトウェアも開発できるとのこと。エンコードやデコード処理と画像検出処理などは併用が可能だが、独自用途のソフトは単体で動作させることになる。なお、SpursEngineの処理速度はPCI Express x4接続でもボトルネックにならない程度のため、現在出回っているPCI Express x1接続のカードなら、インタフェースの帯域をフルに使えることも説明した。
壇上に立った同社の森氏は「我々はSpursEngine搭載カードが売れないと成果になりません。SDKも有料にしとけばいいのに、無償配布を決めてしまいました。みなさんに魅力的なソフトを作っていただいて、搭載カードがもっと普及することを願っています」と、率直に希望を語ってセッションを終えている。
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